PEOPLE
ピースな人々
5分間に込める、熱き青春
長崎県立大学よさこい部 リズム戦隊メロディアス 21代目代表 向坂彩鈴さん
佐世保市にある長崎県立大学にお邪魔すると、放課後の体育館には大学生の元気な声が響いています。笑顔で案内してくれたのは、同大学よさこい部 リズム戦隊メロディアス 21代目代表の向坂彩鈴さん。部員は1〜3年生までの54人(今年2月現在)ですが、3年生は就職活動のため一線を退き、主に1〜2年生の30人で活動しているそうです。

よさこいと佐世保の関係
長崎県佐世保市では毎秋「YOSAKOIさせぼ祭り」が開催され、街じゅうがにぎやかな雰囲気に包まれます。
ここでまずは少し、よさこいと佐世保の関係について歴史を紐解いてみましょう。
よさこいの歴史は1954年、高知市での「よさこい祭り」から。この祭りをヒントに1992年、札幌市で大学生たちが始めた「YOSAKOIソーラン祭り」をきっかけに、全国各地へとよさこいブームが広がりました。
この札幌の祭りをビデオで見た佐世保市の商店街メンバーが、地域おこしの目玉として開催したいと、現地を視察。1997年に佐世保初のYOSAKOIチームが結成され、おくんちさせぼ祭りにて2チームが初のお披露目を行いました。
この時の演舞に影響を受けて翌年には4チーム、翌々年にはさらに15チームが誕生。「YOSAKOIさせぼ祭り」がスタートし、佐世保でのよさこい人気が一気に高まりました。

今では「YOSAKOIさせぼ祭り」は佐世保の秋の風物詩となり、昨年(2024年)の大会には全国から130ものチームが集結。九州はもちろん西日本でも最大規模のよさこいイベントとして知られています。
今回お話しを伺った「長崎県立大学よさこい部 リズム戦隊メロディアス」は、そんな佐世保とよさこいの歴史を共につくり上げてきた創部21年目のチームです。
昨年3月、熊本県で開催された「九州がっ祭2024」ではブロック3位入賞、学生チームだけで競う「火の国青春合戦2024」では敢闘賞。7月の「さのよいファイヤーカーニバル」ではブロック大賞を受賞。
そして10月の「YOSAKOIさせぼ祭り」ではブロック特別賞の演舞(えんぶ)賞を獲得するなど、昨年だけでも数々の実績を残されています。

運営も演舞も自分たちの手で
月に1度のペースで挑戦
ー よさこいチームとしての出場の頻度は、どれくらいですか?
佐世保市周辺で行われるイベントに呼んでもらったり、九州各地で開催されるお祭りに出場したりしています。12〜2月はオフシーズンで出番が少ないのですが、それ以外の時期はほぼ月1回のペースで舞台に立っています。
ー なかでも一番力が入る大会などはありますか?
私たちのチームで一番の大舞台・節目といえば、10月に行われる「YOSAKOIさせぼ祭り」です。毎年3年生にとって、この大会が引退前の最後の演舞となります。
この大会後、3年生が担ってきた部の運営も一つ下の学年に引き継がれます。代表を務める学年のことを「代持ち」と呼んでいるのですが、代持ちが部活動全般を動かしていく中心メンバーになるんです。

ゼロからつくり上げる演舞
ー チームの運営も、大学生の皆さんでされているんですね。よさこいチームの運営に必要な仕事には、どのようなものがありますか?
仕事は多岐にわたります。演舞をつくる上で欠かせない、振付の考案や楽曲制作の段取り、衣装の決定や発注、日々の練習の運営、大会・イベントの手続きや、遠征の際のバスや宿の手配、部内レクリエーションの企画、部の雰囲気づくりまで、代持ちの学年を中心に行います。
仕事量が多いので協力は不可欠です。高校時代までのように顧問の先生もいません。代表として人を信じて任せることの難しさを感じることもありますが、一緒に悩みながら乗り越えていける同期の存在が、とてもありがたいです。

ー 代持ちの学年を中心に振付や楽曲制作、衣装の決定を行うそうですが、毎年踊りや曲、衣装が変わるということですか?
はい。毎年、楽曲も振付も衣装も変わります。10月に3年生が引退してから、代持ちの学年である2年生はまず楽曲制作から取り掛かります。およそ8カ月間かけて楽曲や振付、衣装をすべて完成させ、3年時の8月から新曲の演舞を始めるんです。
演舞をゼロからつくり上げるのは、皆んな初めての経験。不安もありますが、それ以上に協力し合って楽しんでいる部分が多いかもしれません。
引退前最後の「YOSAKOIさせぼ祭り」では、自分たちが手掛けてきた楽曲・振付・衣装で演舞を行なって締めくくります。代持ちとしていろんな経験をしてきた先輩方が、3年生の最後の演舞で見せてくれた達成感に満ちあふれた表情は、とても印象的でした。

ー 振付や衣装、楽曲もゼロから手掛けるものとは知りませんでした。いま皆さんが踊っているこの曲は、先輩たちが作った楽曲なんですね。
そうなんです。最終的な音源の制作はプロに依頼するのですが、「最初は静かに始める」「盛り上がりをこの辺りに持ってくる」「この部分はこんな感じの曲調」というふうに曲の構成やイメージをより具体的に伝えられるよう、自分たちでアイデアを出し合い、歌詞も試行錯誤して検討し、細かく決めていきます。
「リズム戦隊メロディアス」のチーム名通り、ヒーローと悪役が掛け合うコンセプトを大事にしつつ、見応えのある演舞にするにはどんな曲がいいのか。よさこいの音楽だけでなく、あらゆる音楽を聴いてイメージを膨らませます。

演舞で最も大切なことは
「楽しむこと」が大事
ー 部員の中でよさこいの経験者は、どれくらいいらっしゃるんですか?
実は部員のほとんどが初心者なんです。高校時代の部活も運動部、文化部、帰宅部とさまざまで、私自身もバレーボールやハンドボールをやってきて、よさこいのことは全く知りませんでした。入学してすぐの新入生歓迎会で見た演舞で、先輩方の笑顔や華やかな踊りにひかれて「この部活に入ったら絶対楽しいだろうな」と入部を決めたんです。
週3回の練習を続けていると、徐々に踊れるようになってどんどん楽しくなります。大学生なのでもちろん学業優先、アルバイトをしているメンバーもいるので、毎回全員が集まるのは難しいのですが、それでもできるだけ「練習に行きたい」と思えるような時間と雰囲気づくりにも力を入れています。

ー 練習で大切にしているのは、どんなことですか?
練習でも本番でも一番大事なのは、自分たち自身が演舞を楽しむことです。自分たちが本気の笑顔で、100%の心で演舞を楽しむからこそ、お客さんに楽しさや感動が伝わります。真面目な練習だけだと息が詰まるし、ダラダラしてもいい演舞にはならない。練習は本気でやって、練習以外はとことん休む・遊ぶ。メリハリをしっかりつけた練習の運営は、結果的にいいステージに直結すると感じます。
本気だからこそ意見が衝突することもありますが、不満や違和感は我慢せずに発言すること、それぞれの考えの違いを尊重しながらもベストの選択が何なのか、みんなで話し合って考え抜くことを大切にしています。

ー よさこいを通じていろんな人との交流が生まれそうですね。
九州各地のお祭りに出場しているので、徐々に他のチームにも顔見知りが増えます。特に学生チーム同士では交流会や合宿をするので、大学を超えて九州全域に友人がたくさんできました。代持ちだけでの集まりもあって、同じ立場の人と悩みを相談し合ったり、意見交換ができるのはとても心強いです。
それにOBとの関わりがあるのも、うちのチームの魅力です。私が1年生の時には、代持ちの先輩たちが「初代から現役のメンバーで一緒に演舞」を企画。このチームを守りつないでくれた先輩たちと踊れたのは、貴重で感動的な体験でした。各時代の出来事や楽曲制作秘話、就活の経験談などを直接聞けたのもうれしかったですね。

愛と勇気と笑顔で
ー 向坂さんが考えるよさこいの魅力とは、メロディアスの強みとは何でしょう?
演舞はたったの5分ですが、完成するまでにはメンバー数×1〜3年分の時間と情熱、葛藤や衝突、和解や学び、喜びが詰まっています。日本全国、チームの数だけそんなドラマがあると思います。たくさんの想いが詰まっているからこそ、踊り子は輝けるし、観客に感動を届けられる。それがよさこいの魅力であり、私がよさこいを続けている理由だと思います。
メロディアスは、他のチームにはない戦隊モノのコンセプトと演舞のストーリー性、一度見たら忘れられないインパクトが特長です。学生チームならではの元気のよさや声の大きさ、弾ける笑顔も強みで、期間限定の大学の部活だからこそ、より熱い気持ちが注げていると思います。

ー 最後に、ながさきピース文化祭2025への意気込みをお願いします。
県内各地でさまざまなイベントが開催されるということで、個人的にもとても楽しみです。よさこいチームとして私たちの演舞を披露できる機会があれば、大きな舞台でたくさんの方々に見てもらえるかもと、部員一同ワクワクしています。
その際には、チームの合言葉「愛と勇気と笑顔」を全国に届けられるよう、精一杯の演舞をしますので応援どうぞよろしくお願いいたします。
